わたに戻ろうとする糸
伊勢木綿 臼井織布
見学に行きたいと申し出ると
代表の臼井さんは気軽にお喋りしてくれた。
江戸時代から続く小さな工場に古い機械が有って、
一台で一日一反だけしか織れない。
古い道具や機械を自分で直すと言ってたし、
もう小さなパーツを作っている作り手は死んだと言った。
木だから歪んでくるし、溝がすり減ってくる。
わたに戻ろうとするのは、撚りをかけ過ぎずに固めてから織っていくので、
使っていくうちにどんどん柔らかくなる性質がある。
あ、これは良いなぁ。
使っていくうちに変化するのは相良に合う。
試しに作ってみて良いですかと言うと、
これも作ってみな!と、色々と生地をくださった。
こんな時に、自分の手で、つくれる人間で良かったと思った。
幅も大きくないので、少しずつ相良の衣に入れていきたいと思っています。
臼井さんはチャーミングで素直なひとだ。
ちまちま服を作る人間はあんまり好まれない、売上にならないから。
せめて近くで、作り続けていけることだけ。
拘るのはそこじゃない、面白いものが作れるかどうかという気持ちが伝わってきた気がする。
昨日こんなことを記事にしていたら、
今から行っていいですか
と、工房に突然来た。
まさか、織元の代表がわざわざ来るなんて。若かりし頃の私は、そんなこと思わなかったろうな。
工場にこのあいだ来たでしょう、あれからHP見たんだよ、それでここに来なきゃと思った。と。
どこか懐かしい気持ちになったと、相良のことを話してくれた。
とても応援してくれて、こころが熱くなった。
私、死ぬ気で手、動かします。
そう、思った。
お金じゃない熱意やものづくりにおいて、こころ通じるものがある。
一人だけど一人じゃない。
そう思えました。
記録は今後月曜日に更新します。
Narumi Uetani